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  • 2015-08-14

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『ハンコヤドットコム』に見るeコマースのポテンシャル

 ハンコヤドットコムとは?

ハンコの問屋が多い、大阪に本社がある「ハンコヤドットコム」は、1998年に創業した印鑑やスタンプなどをインターネット上で販売する会社です。2007年には全国イーコマース協議会が主催している「ベストECショップ大賞2007」で大賞を、2008年にはEC研究会が主催する「第12回日本オンラインショッピング大賞」最優秀大規模サイト賞を授賞したことで、さまざまな起業セミナーで紹介されることも多くなりました。

今回は、印鑑を販売するこの会社がどのように成功したのかを探ることで、新たにスタートするネット通販事業の参考になればと思い取り上げました。特に事業設計に焦点を絞って見ていきます。

リピートという概念について

ハンコは一度購入すれば、一生のうちに何度も買い替えるものではないため、リピーターを増やすことが難しいのではないかと疑問に思う方も多いのではないでしょうか。この疑問はある意味では正解であり、ある意味では完全に間違っています。

リピート率が低いのではないかと思うのは、個人顧客だけを想定しているからです。個人が人生で必要とする印鑑はせいぜい数本程度。多くても5~10年に1本買うか買わないか程度でしょう。しかし企業に目を転じるとどうでしょうか。起業時には実印、銀行印、角印のほかに、認印や各種スタンプなどが必要になります。また、大きな会社だと部署ごとに用途別の印鑑やスタンプが必要になる場合もあります。

このショップでは、会社設立に必要な印鑑のセットや、自分で書体・レイアウトを選ぶことができるシャチハタタイプの住所印など、オフィス・事務用スタンプが800点以上そろっています。また年中無休、24時間インターネットで受付をしているので、平日12時までの受付なら最短で即日に出荷されます。すぐにでも印鑑が必要となる企業にとってこのようなショップは、切っても切れない関係だと言っても過言ではありません。つまり、昔からハンコ販売のビジネスモデルは、一見B2Cのように見えるものの、実はB2B的なモデルであるということが言えるわけです。

さらに、個人で印鑑を注文する場合もありますが、発送先を見ると会社になっていることも少なくありません。いわば企業内(B2B)から個人的な需要(B2C)が生まれているわけです。

専門性と商圏

次に重要となる「専門性」と「商圏」という概念について考えてみましょう。

(1)専門性について………ぶれない運営とオリジナリティーの創出

そのショップで何を扱っているのかが、一目で分かる店名も重要です。今回紹介している「ハンコヤドットコム」が印鑑やスタンプを専門に取り扱っているショップだということは一目瞭然。実に秀逸なネーミングです。新たに事業を始めようとするときには、このような発想も重要となります。あれもこれもと多くの商品を取り扱う店名にした場合、知名度を高めるために広告を打つなどの施策が必要となりますが、「ハンコヤドットコム」は専門性を前面に打ち出すことで知名度を高めたわけです。この戦略が成功し、オリジナリティーに富んだ高価格帯商品もスムーズに展開できたのだろうと推測できます。専門性を明示したことで、ぶれない経営ができたと言ってもいいでしょう。

(2)商圏について………ネット販売の可能性

みなさんのご自宅や職場の近くにもハンコ屋さんがあると思います。しかし、商圏はせいぜい半径数km程度であることが想像できます。対してインターネットで販売している「ハンコヤドットコム」は商圏に縛られず、年間30万5095件の出荷実績、年商約10億円を誇っています。イニシャルコストもランニングコストも実店舗よりもはるかに安価なので、インターネットでの通信販売がどれだけ高いポテンシャルを有しているか分かると思います。

また、2015年の夏には期間限定で、成田国際空港を訪れた訪日外国人をターゲットに、アンテナショップを展開しました。通常のハンコの販売に加え、英名を漢字にしたオリジナルのハンコを、飛行機の待ち時間で制作し受け取るようにするなど、日本の伝統を外国人に向けてアピール。国内だけでなく海外にも目を向け、新しい販売の形にもチャレンジしています。

eコマースの特性を活かしながら専門分野に特化する

今回は印鑑とスタンプに特化した事例を取り上げました。もしも日用雑貨の一つとして、印鑑やスタンプの販売を行っていたら、また実店舗のみで勝負していたら、今の「ハンコヤドットコム」は存在していなかったでしょう。どこまでも拡大していく可能性を秘めたインターネットという舞台で、専門分野に特化することで急成長し成功する例は、これからも増えていく予感がします。


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